前回の記事で2号池と濾過槽の設置まで紹介した。
今回はベルサイフォンの製作、取り付けから濾材(軽石)投入までについて書く。ベルサイフォンは調整にかなり手間取りまともに稼働できるまでに数日かかってしまったが、少し工夫することで最終的には中々いい感じで稼働するようになった。
ベルサイフォンとは
ベルサイフォンとは、濾過槽(植物を入れる槽)の水位を自動で上下させるための仕組みである。作ってしまえばポンプの入り切りなどをしなくてもよく、動力なしで天候や時間に関係なく勝手に作動してくれる。(※濾過槽に水をくみ上げるポンプは必要である)
大まかな仕組みを下の図にまとめてみた。濾過槽の中にベルサイフォンのための管が2本入っている図で、黒い線が濾過槽、緑の線がカバー、青い線がオーバーフロー管である。
言われてみればなんということはない仕組みであるが、最初にこれを考えた人はかなりすごいと思う。
なぜベルサイフォンを設置するのか
濾過槽の水位が上下することで、植物の根に空気が触れてよい効果があると言われている。自分で実験したわけではなくインターネット上にある記事の受け売りである。実験してみたわけではないので実際のところは不明である。
僕がベルサイフォンを設置する理由は、ただ単に仕組みがおもしろそうで試しに作ってみたからである。
ベルサイフォンの製作
オーバーフロー管
オーバーフロー管には塩ビパイプ(VP)の20Aを使用する。これを給水栓ソケット20Aに差し込み、底の穴から出てきたバルブソケットのねじ部分にねじ込んで取り付けた。本来の使用方法と違うため、このままだと接合部に結構大きな隙間ができて水が漏れるため、パッキンを取り付ける。
サイズを選んだ根拠は、現在庭池で使っているポンプは以前家の中にあるオーバーフロー水槽で使っていたポンプで、オーバーフロー水槽の排水径が20Aだったから。
・給水栓ソケット
その名の通り給水栓(蛇口)を取り付けるための部品。蛇口はおねじなので給水栓ソケットに蛇口をねじ込んで取り付ける。
・バルブソケット
バルブを取り付けるため部品。バルブ側がめねじになっているため、バルブにねじ込んで接続する。
・パッキン
濾過槽上部(内部)に1枚と濾過槽下部(外部)に1枚挟むといい感じで隙間がなくなる。
カバー
カバーには塩ビパイプ(VU)40Aを使用する。
40A以上の塩ビパイプにはVP、VUの2種類がある。VPのほうが配管の樹脂部分が分厚い。外径は同じなので、VPのほうが内径が小さい。当然分厚いほうが強度はあるが池やらビオトープ、水槽に使う分にはVUで全く問題ない。
VU管にはキャップを取り付け、下部に水と空気を取り入れるための穴をあける。これをオーバーフロー管の上に被せて設置する。
・キャップ
配管の末端に取り付けて蓋をするためのもの。今回はサイフォンの流路を作るためにVUの上部に取り付ける。通常は塩ビパイプ用ののりで接着するのだが、ベルサイフォンに使う程度であれば接着は必要ない。
試運転、調整
ここから実際に水を流しながらベルサイフォンの調整をしていく。これが中々苦戦した。思い付きで作業をするからこうなるのだが、仕事でもないのに時間をかけて計画を練るというのも性に合わないので仕方がない。
失敗①:濾過槽の水位が上がらない
我が家のアクアポニックスは、ポンプから吸い上げられた水が濾過槽に入り、一部が濾過槽のすぐ下にある2号池に給水される。給水の経路は濾過槽の下部にあけた穴から水が漏れて2号池に落ちるというもの。
当初、水が濾過槽にたまる速度は極力ゆっくりのほうがよいだろうと思い、水位が少しずつ上がるように多めに穴をあけたのだが、濾過槽内の水位が上がると水圧が上がり排水量が増えてしまい(理屈は長くなるので割愛)、一定の水位で給排水のつり合いが取れてしまってそこから水位が変動しなくなってしまった。
仕方がないので一度水を抜いてバスボンドQで穴をふさいだ。
失敗②:サイフォンがうまく始まらない
穴をふさぎ濾過槽内の水位が上がるようになったのはいいが、今度はベルサイフォンの排水がうまくいかず給水スピードに追い付かない症状が出た。
ベルサイフォンのカバーより高い位置に水が来ているのに排水が明らかに弱い。恐らくオーバーフロー管の上端とカバーの上端管にある空間が大きすぎるのが原因でカバー内の空気が抜けきっていないのだろう。ここはカバーを少し短くして空間を狭くする。
カバー上端とオーバーフロー管上端の間にVP20A内部の断面積と同じだけの面積があれば排水能力的には問題ないはずなので、必要最低限の隙間をざっくり計算すると、4mm程度隙間があればよさそうである。
VP20Aの内径 = カバー上端とオーバーフロー管上端の隙間(X)の面積
(20÷2)[半径]×(20÷2)[半径]×φ = X[隙間] × 26 [VPの外径] × φ
X = 10 × 10 ÷ 26 ≒ 4mm
現状、20mm位隙間があったためカバーを15mm程度短くしてみたところ、サイフォンがスムーズに始まりしっかり排水され、槽内の水位が下がるようになった。
失敗③:サイフォンが止まらない
あまり詳細を検討せずに思い付きで始めたのも悪かったが、躓きそうなポイントですべて躓いているのは笑えてくる。今度は水位が下がった際に空気をうまく吸い込まずサイフォンが切れず、ずっとオーバーフロー管から排水されてしまう。
カバーの下部にはドリルで穴をたくさんあけていたのだが、一部切り欠きを入れて空気を取り入れやすい形状に改造する。
このような切り込みを2か所に入れ、高さがぴったりになるようにやすりで少しずつ削りながら調整した。
ようやく作動
(計画不足による)数多の困難を乗り越え、ついにベルサイフォンが動き出した。ここ最近では一番の達成感。あまりに嬉しくて動画を撮ったのでもしよければ見ていただきたい。
(排水開始)
(排水停止)
濾過槽の下部
そういえば濾過槽の下がどうなっているか紹介していなかったが、20Aの配水管そのままだと水の勢いが強すぎるため、穴をたくさんあけた直管をつなげて水の勢いを分散させておいた。
濾過槽に濾材を入れる
作業もいよいよ大詰め。濾過槽に濾材を入れる。
濾材はハイドロボールが機能面、性能面ともによさそうだがなにぶん金額が高い。続くかもわからないため、プラ舟ビオトープでも実績のある軽石を使うことにした。40kgで1500円位。
濾材を入れる前に、ベルサイフォンにはカバーをかぶせておく。直接濾材の中に埋めてしまうとメンテナンス性がかなり悪くなる(カバーを外すのに濾材を取り出す必要がある)ためである。カバーはVU管75A。
写真は、塩ビパイプに切り込みを入れたものだが隙間が少なすぎたため、この後ドリルでたくさん穴をあけた。写真は撮り忘れた。
そして濾材を投入。40kgは買いすぎかと思ったが丁度いい量だった。
まとめ
思ったより製作に時間がかかったが、アクアポニックスの形が出来上がった。2号池には金魚に追いやられてあまり姿を見なくなったミナミヌマエビを繁殖させる予定。あとはメダカも入れたいと思う。
ベルサイフォンは、空気を吸い込むタイミングにムラがあり動作が若干不安定なのが気になるため、もう少し改良を加えようと思っている。